文化は失ってからでは遅い。小平の文化財を守り、活かす。

令和6年(2024年)6月定例会 一般質問「戦略的な文化財保護と活用による魅力あるまちづくりの推進を」レポート

このレポートの要約

令和6年6月定例会では、小平市の文化財を「守る」だけでなく「地域の魅力として活かす」ための戦略的な取り組みを議会で提言しました。

  • 文化財指定件数が少ない理由:近隣自治体と比較して際立って少ない都・市レベルの指定件数の背景を問いただし、「歴史が浅いことは守る努力を怠る理由にはならない」という問題意識を提起した
  • 「登録制度」という新たな選択肢:指定より緩やかな文化財登録制度を活用することで、これまで指定に至らなかった文化財を幅広く保護できる可能性を提言した
  • 消えゆく無形文化財の現実:棒打ち唄・たいまつまわし・糧うどんなど、担い手不足で存続が危ぶまれる無形文化財の実態を明らかにし、早急な対応を求めた
  • デジタルで文化財を「使える資源」に:デジタルアーカイブ・AR・NFTなどを活用し、保存にとどまらず地域の魅力発信や観光・シティプロモーションにつなげる活用策を提言した
  • 「ストーリーで守る小平の文化」という視点:個々の文化財を点で守るのではなく、小平の歴史と文化をひとつの物語として発信することで、次世代への継承と地域ブランドの確立を目指すことを訴えた

目次

「小平の歴史は浅い」は言い訳になるか

2024年6月。私は「戦略的な文化財保護と活用による魅力あるまちづくりの推進」をテーマに、議会で質問に立ちました。

小平市の文化財指定件数は、国指定3件、都指定1件、市指定21件
一方、近隣自治体では国指定が2〜3件、都指定が3件、市指定が35〜64件に上ります。特に、都・市レベルの指定数が際立って少ないのが現状です。

なぜ、この差が生まれているのか。市の答弁はこうでした。 

「小平市域の村落形成は、玉川上水の開削(約360年前)以降。江戸時代以降の歴史が中心であるため、文化財が少ない」

確かに、小平は京都や鎌倉のような古都ではありません。この土地の歴史は、江戸時代の新田開発から始まります。

しかし私は、こう考えています。

歴史が浅いことは、文化財が少ない理由にはなっても、守る努力を怠ってよい理由にはならない。

むしろ、江戸時代に先人たちが切り拓き、暮らしを築いてきたその歩みこそが、小平の歴史であり、独自の価値なのではないでしょうか。その象徴の一つが、小平に伝わる郷土芸能です。

小平市の無形民俗文化財に「鈴木ばやし」があります。
江戸時代末期の弘化4年(1847年)ごろ、若者の間に広まっていた賭博や深酒などの乱れた風潮を憂いた人物がいました。深谷定右衛門。私の先祖です。定右衛門は、健全な娯楽として江戸祭囃子を地域に広めました。それがやがて地域に根付き、世代を越えて受け継がれ、今日まで続く郷土芸能となりました。

文化とは、誰かが守ろうとしなければ消えてしまうものです。
しかし、守ろうとする人がいれば、百年以上の時を越えて受け継がれていく力も持っています。

先人たちが守り、つないできた「文化の力」。その価値を、今度は私たちの世代が未来へ手渡していく。そんな思いを胸に、私は令和6年6月定例会の議会質問に臨みました。


質問①②:指定から「登録」へ——ハードルを下げる発想

眠っている文化的資源の発掘

答弁では、2013年に実施した歴史的建造物の現況調査によって、農家の母屋・土蔵・石蔵・神社の社殿・寺院の本堂など、市内に多くの歴史的建造物が存在することが確認されていました。

さらに小平市文化財保護審議会では、市内の古道に置かれた道標(石造物)、近代水道施設(近代土木遺産)、たいまつまわし(伝統行事)、糧うどん(伝統食)などが指定候補として検討されていることも明らかになりました。

「登録文化財」制度という選択肢

私が強く訴えたのが、文化財「登録」制度の創設です。

指定文化財は厳格な審査と保護義務を伴いますが、登録文化財はそれより低いハードルで文化的価値のある資源を公的に認定できる制度です。東京都内の44%の自治体がすでにこの制度を持ち、そのうち41%は財政支援なしで運用しています。

「財源がないから登録制度はつくれない、は理由にならない。まず制度をつくり、どんな文化財が地域に眠っているかを可視化することが先だ」

答弁では「他市の状況も踏まえ研究していく」という方向性が示されました。しかし私は「困難ではなく、やるべきだ」と強く要望しました。文化財は、失ってからでは取り戻せません。


質問③:棒打ち唄・たいまつまわし・糧うどん——消えゆく無形文化財

たいまつまわしは審議会で候補に

現在、小平市の無形民俗文化財は「鈴木ばやし」の1件のみです。しかし地域には他にも魅力的な無形文化財が存在します。

たいまつまわしについては、すでに文化財保護審議会の候補リストに挙がっていることが確認できました。引き続き文化的価値の調査研究が進められています。

棒打ち唄が「変容し過ぎている」という問題

私が取り上げたのが棒打ち唄(麦打ち唄)です。かつて農家が脱穀作業をしながら歌ったこの唄は、現在は民謡保存会が着物を着て三味線伴奏で披露するスタイルに変わっています。

答弁では「本来の農作業と一体でこそ価値を持つ無形民俗文化財であり、現在の形は変容し過ぎている」という認識が示されました。

「ストーリーで守る」という視点

私が提案したのは、個別の文化財を点で見るのではなく、小平の農業文化の総体をストーリーとして守るという考え方です。

玉川上水開削後、大きな川を持たない小平の先人たちは、稲作ではなく陸稲・小麦・大麦を育て、そこから糧うどんの文化が生まれました。小麦の脱穀には棒打ち唄が歌われ、収穫の喜びはたいまつまわしで祝われた——これら全体が「小平の農業文化のストーリー」として成立します。

文化庁の「食文化ストーリー創出・発信モデル事業」の活用も視野に、この文化的ストーリーを保護・発信することを求めました。


質問④⑤:文化財の「収益化」という新発想

無料施設から生まれる「稼ぐ文化財」へ

小平ふるさと村も鈴木遺跡資料館も、現在は入場無料です。文化財の活用による歳入はゼロという現状が確認されました。

一方で、福祉作業所による石斧型クッキーや地層を模したバームクーヘンの販売など、草の根レベルの取り組みが生まれていることも明らかになりました。

私が提案したのは2点です。

文化庁のファンドレイザー派遣事業の活用。 2024年度から資金調達の専門家を派遣するこの制度を使い、鈴木遺跡や小平ふるさと村の収益化モデルを設計することを求めました。

民間助成金の積極的な活用。 鈴木ばやしが明治安田クオリティオブライフ文化財団の助成を受けていることが確認できました。市が情報を把握し、団体に積極的に伝える仕組みを求めました。


質問⑦:デジタルアーカイブ・AR・NFTで文化財を未来に残す

「デジタル化したものはない」という現状

現在、小平市で文化財をデジタル化したものはありません。図書館の平櫛田中彫刻作品の3Dモデルが唯一の事例でした。

その理由は率直に「ノウハウが不十分」とのことでした。

文化庁のデジタルアーキビスト派遣を活用せよ

博物館法の改正を機に、文化庁が資料デジタル化の専門家「デジタルアーキビスト」を派遣する事業が始まっています。私はこの派遣を積極的に活用するよう強く求めました。

答弁では「研究していく」という方向性が示されました。

QRコードからARへ——鈴木遺跡の可能性

私が視察で目にしたのは、鈴木稲荷そばのケヤキの木に貼られたQRコードでした。かざすと市のウェブサイトに飛ぶ、シンプルな仕組みです。

しかし私が描くのはその先です。

AR(拡張現実)技術を使えば、スマートフォンをかざした瞬間に旧石器時代の風景が目の前に広がる体験ができます。VR・デジタルスタンプラリー・NFT化による希少価値の付与——こうした技術を組み合わせることで、鈴木遺跡や小平ふるさと村は観光の目玉になり得ます。

「失ってからでは遅い。デジタル化すれば完全に保存できるわけではないが、記憶をとどめるために今できることをやる」


この質問のその後

令和6年6月定例会で文化財政策を取り上げてから約2年が経ちました。大きな制度変更には至っていませんが、いくつかの動きも見られます。

その一つが海岸寺山門の修復です。修復工事は寺院側が主体となって実施されましたが、工事後の報告書や記録データは市にも提出されています。さらに学芸員と大学教授の連携により、山門の3Dデジタルデータ化を試みる取り組みも行われています。公開方法などは現在検討中とのことですが、文化財をデジタル空間に記録する取り組みが始まりつつある点は注目すべき変化です。

私が議会で提案した

  • 文化財登録制度の創設
  • 無形文化財の発掘
  • 文化財の収益化
  • デジタルアーカイブの推進

これらは、まだ道半ばです。文化とは、誰かが守ろうとしなければ消えてしまうものです。
しかし、守ろうとする人がいれば、何百年もの時を越えて受け継がれていく力も持っています。

小平の歴史は決して長くはありません。それでも、この土地で生まれ、受け継がれてきた文化は確かに存在します。

「小平の文化は、守るだけでなく、活かすことで次代に輝き続ける」 この信念を持って、文化財政策を議会から動かし続けます。


この記事が気に入ったら
いいねしてね!

シェアはこちら
  • URLをコピーしました!
目次