AIが答えを出す時代に、何を教えるか。小平市の教育の未来を問う。

令和5年(2023年)12月定例会 一般質問「AI時代の教育について問う」レポート

このレポートの要約

令和5年12月定例会では、生成AIが教育現場に本格的に入り込む前夜、「AI時代の教育」の在り方を議会で問いました。

  • 文科省ガイドライン公表後の小平市の動向:2023年夏に国が生成AI利用の暫定ガイドラインを示したことを受け、小平市教育委員会がどう動いたかを問いただした
  • 「AI時代の教育」の核心:AIが答えを出せる時代に、こどもたちに何を教えるべきか。自ら問いを立て考え抜く力を育てるための提言を行った
  • EdTech活用の現状と課題:AIドリル・デジタル教材・CBT(コンピュータを使ったテスト)など、教育テクノロジーの活用状況と、小平市が取り組むべき課題を確認した
  • 「AIネイティブ世代」を育てるために:生成AIとともに育つこどもたちに必要なリテラシーと、学校教育が果たすべき役割を問うた
  • あれから2年、小平市の教育はどう変わったか:当時の質問がその後の教育政策にどう影響したか、現在地を照らし合わせる
目次

「AIを教える前に、教員がAIを知らない」という現実

2023年7月、文部科学省が「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を公表しました。学校現場でChatGPTをはじめとする生成AIをどう扱うべきか——その方針がようやく国として示された瞬間です。

しかし私が危惧していたのは、ガイドラインが出た後の問題でした。

「ガイドラインは出た。しかし、現場の教員がAIを使いこなせなければ、こどもたちに教えることなどできない」

新しい技術が教育現場に入るとき、最も重要なのは「教える側が本質を理解しているかどうか」この問題意識を持って、令和5年12月定例会の一般質問に立ちました。


質問①:生成AIガイドライン公表後、小平市の教育はどう動いたか

「改定作業中」という答弁の意味

2023年6月の定例会で、私は「国の生成AIガイドラインが出たら、小平市立学校の情報活用能力育成指針を改定するべきだ」と提言していました。

12月の質問で確認すると、7月のガイドライン公表を受け、指針の改定作業が進んでいることが確認できました。

改定の重点は2点です。

「情報モラル・情報リテラシーの育成」と「プロンプト(AIへの指示の出し方)の指導」

特に後者は重要な視点です。生成AIを使いこなす力の核心は、「どう問いを立てるか」にあります。これはプログラミング教育の「論理的思考力」と深くつながっており、算数・理科・国語を横断する力が問われます。

私はこの議論の中でこう指摘しました。

「生成AIはSTEAM教育の最高の教材だと思う。あらゆる分野の知識がないと使いこなせない。逆を言えば、AIを通じてあらゆる分野の学びが統合できる」


質問②:生成AI活用のプロジェクトチームと積極的な取り組みを

「限定的な利用から始める」という答弁への問いかけ

答弁では、生成AIの教育活用について「有効な場面を検証しつつ、限定的な利用から始めることが適切」という文科省ガイドラインに沿った慎重な姿勢が示されました。

しかし私が求めたのは、その先でした。

「もうすぐ『AIネイティブ世代』の子どもたちが育ってくる。待っている時間はない。東京都が指定した生成AI研究校9校の先進事例を積極的に参考にしながら、小平市としても早めに手を挙げてパイロット的な取り組みを進めるべきだ」

専門家を招いた教員向け研修が2024年2月に予定されていることも確認しました。この研修では、時間割の作成、英会話教材の開発、校務の効率化など、教員がAIを「使う側」として実践的に学ぶ内容が予定されていました。


質問③:教員のデジタルスキルのキャッチアップ

「全教員」ではなく「推進委員のみ」という現実

ICT活用研修やプログラミング教育研修は実施されていましたが、生成AIに関する研修の対象は各校の情報教育推進委員のみでした。全教員が対象ではなかったのです。

私が主張したのはシンプルな要求でした。

「生成AIを子どもたちに教えるのは、情報担当の先生だけじゃない。学級担任も国語の先生も理科の先生も全員が関わる話だ。管理職も含め、全教員が生成AIについて最低1回は研修を受けるべきだ」

また、文部科学省がYouTubeで公開していた「生成AIの利用に関するオンライン研修会」(2023年9月開催・5回シリーズ)について、各校への周知と積極的な受講を求めました。答弁では、各校に周知し積極的な参加を促していることが確認されました。


質問④:EdTech(AIドリル・CBT)の活用状況

全小中学校でEdTechを活用中

答弁によれば、小平市の全小中学校では授業支援システムを導入し、AIドリルを含むデジタル教材を活用していることが確認されました。

複数の授業支援アプリを実証実験中であり、現場の評価は「非常に好評」とのことでした。

しかし私が問いただした点があります。

「実証実験の成果を定量的なデータで示せますか?」

答弁は「まだ把握できていない」というものでした。

「効果がありそうだ」という感覚的な評価だけでは不十分です。どのクラスで何が改善されたか、どのこどもがどこでつまずいたか——データによる検証があってこそ、次の改善につながります。

2025年から始まるCBT(コンピューター試験)への対応

2025年の全国学力テストから、中学3年生の理科がCBT(コンピューター・ベースド・テスティング)方式に移行することが発表されていました。2026年以降、小学校にも拡大していく予定です。

答弁では「準備は整っている段階」とのことでしたが、一斉接続時のネットワーク負荷という課題も残っており、私は継続的な環境改善を求めました。


この質問の締めくくりに込めた思い

この質問の最後、私はこう締めくくりました。

「どんな時代もテクノロジーがつくるわけではなく、つくっていくのは人間です。これから来る時代は、今生きている子どもたちがつくっていくもの。その子どもたちが、学びの機会をハード面・ソフト面の不備で逃すことがないよう、しっかりとした予算をつけて教育を進めてほしい」


この質問のその後

令和5年12月の質問から約2年が経ちました。小平市の教育現場は、少しずつ変わっています。

論点(2023年12月の質問)当時現在
生成AIの教員活用管理職・情報教育担当教員と活用方法を研究していく段階専門家講師による教員研修会を4回実施。校務で生成AIを活用する学校が増加し、業務改善につながっている
情報活用能力育成指針策定済みだが生成AI未対応2024年4月に改定し、生成AIに関する内容を追記
全教員対象のAIリテラシー研修具体的計画なし2025年度より、情報リテラシー向上と実践的な校務AI活用を組み合わせた研修を実施予定
デジタル教科書(EdTech)一部教科で試行段階英語は小5〜中3の全校で導入。算数・数学は約5割の学校で導入済み
CBT対応のネットワーク環境課題認識あり・整備計画は今後令和8年度予算で整備を実現

前進している部分がある一方、課題も残っています。

研修の対象は希望者・情報教育推進委員・副校長・教務主任が中心で、全教員へのAIリテラシー教育はまだ徹底されていません。デジタル教科書も算数・数学は全校には届いておらず、EdTechの効果を定量的に検証する仕組みも道半ばです

「AIが答えを出せる時代だからこそ、自ら問いを立て考え抜く力を育てる。」

この信念を持って、これからも小平市の教育政策を議会から提言し続けます。


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