生成AIを小平市政へ。議員1年目の、最初の提起。

令和5年(2023年)6月定例会 一般質問「業務及び市民サービスへのAI技術の活用について」レポート

このレポートの要約

令和5年6月定例会では、議員として初めての一般質問に臨み、小平市の行政における生成AI活用をテーマに議会で問いました。

  • なぜ、議員1年目に生成AIを選んだか:2023年春、ChatGPTが世界を席巻する中、科学者・研究者としての知見から「行政が今すぐ向き合うべき技術だ」と確信し、初質問のテーマに据えた背景を記した
  • 当時の小平市の現状:生成AIの活用について「情報収集の段階」と答弁された当時の小平市の実態と、横須賀市など先進自治体との差を明らかにした
  • 使用ルール・ガイドラインの必要性を問う:民間活用が加速する中、行政としての生成AI利用ルールの策定を早急に進めるよう訴えた
  • 職員の人材育成とリテラシー向上:ツールを導入するだけでなく、使いこなせる職員を育てる仕組みづくりの重要性を提言した
  • あれから3年、小平市は動いた:当時「予定なし」と答弁されていた生成AI活用が、3年後にどう変わったかを照らし合わせる
目次

ChatGPTが世界を揺るがしていた、2023年春

2023年春。「ChatGPT」という言葉を、メディアで徐々に目にし始めた頃でした。

OpenAIが開発した生成AI「ChatGPT」は、2022年11月の公開からわずか数か月で全世界のユーザー数が1億人を突破。民間企業では業務活用の検討が加速し、海外の自治体では実証実験が始まり、日本国内でも横須賀市が全国初の行政向けChatGPT実証実験を開始しました。

世界は、生成AIという新技術の可能性と本気で向き合い始めていました。

科学者・研究者として最先端の技術の進歩を見続けてきた私には、確信がありました。

「これは、行政が真剣に向き合うべき技術だ。早く動かなければ、小平市は取り残される」

ちょうどその頃、私は統一地方選挙で初当選を果たし、議員として初めての一般質問を控えていました。テーマは、迷いませんでした。この危機感のすべてを、令和5年6月定例会の壇上にぶつけました。


質問①:小平市のAI活用の現状と評価

当時の小平市のAI活用状況

まず私が確認したかったのは、当時の小平市におけるAI活用の実態です。

答弁によれば、当時の小平市はAI-OCRを以下の業務に活用していました。

  • 課税事務:市民税の特別徴収異動届出書・給与支払報告書のシステム入力にAI-OCRを導入。令和2年度で約85時間、令和3年度で約221時間、令和4年度で約208時間の業務削減を実現。
  • 学童クラブ入会申請:約1,000件の申請書をAI-OCRで処理し、入会決定書の発送を約1週間前倒しに。
  • 保育課の出退勤管理:AI-OCR活用により会計年度任用職員の業務を約3割削減。

データで示した「効果」の重要性

この質問で私が特に重視したのは、数値による効果検証です。

「AIを使っている」だけでは不十分です。どれだけ業務時間が削減できたか、どれだけ市民サービスが向上したか——客観的なデータで効果を示すことが、次のステップへの投資を正当化する根拠になります。

年間200時間超の業務削減という数字は、テクノロジーが確実に効果を出している証拠です。この事実を議会の場で確認し、記録に残したことは、この質問の大きな成果の一つでした。


質問②:生成AIの業務・市民サービスへの活用検討

「予定なし」という答弁に対して

生成AIの活用検討について、当時の答弁は明確でした。

「現時点では、活用する場合の効果や課題等について情報収集を行っている段階であり、現時点での予定は特にございません」

しかし私は、この答弁に対して横須賀市の実証実験データを示しながら反論しました。

「横須賀市では約1,913人の職員がChatGPTを業務利用した実証実験を実施。約8割が業務向上を実感し、文章作成で1人あたり年間約40時間の削減効果が確認されています。国や他自治体の動向を『注視する』だけでなく、小平市として積極的に試行すべきではないか」

なぜ「待つ」だけではいけないのか

私がこの点を強く主張した理由があります。

自治体によって規模も業務プロセスも異なります。他の自治体で効果があったからといって、そのまま小平市に適用できるとは限りません。むしろ、早期に自ら試行してデータを積み重ねることが、小平市に最適な活用方法を見つける近道です。

この主張に対し、企画政策部長から「試してみる価値は大いにあると認識している」という前向きな答弁を引き出すことができました。


質問③:生成AI使用ルール・ガイドラインの策定

「禁止も許可もしていない」という深刻な現状

この質問で明らかになった最も深刻な問題がありました。

当時、市の端末からChatGPTにアクセスすることは情報セキュリティポリシー上「難しい」状態でありながら、禁止の通達すら庁内に出ていなかったのです。

つまり、職員が個人の判断でChatGPTを使っても、それを止めるルールが存在しない状態でした。個人情報の漏洩リスク、著作権の問題、回答の信頼性——これらの課題に無防備なまま放置されていたわけです。

「使えるかどうか」より「ルールが先」

私の主張はシンプルでした。

「使える・使えないに関わらず、まずルールをつくることが先決だ」

生成AIには大きく3つの課題があります。回答の根拠が不明確であること、情報漏洩のリスク、著作権侵害のリスク。これらに対応したガイドラインなしに活用を進めることは無責任です。一方で、リスクを恐れて何もしないことも、行政のDX推進を止めることになります。

ルールがあってこそ、安心して試行できる。この当たり前のことを、議会で強く求めました。


質問④:AI・デジタル人材の育成と外部人材の活用

自治体のデジタル人材不足という構造的課題

AI・DX推進の最大のボトルネックの一つが、デジタル人材の不足です。

民間企業と比較して給与水準が低い行政では、高度なデジタル人材を単独で確保することは非常に困難です。この構造的な課題に対し、当時注目されていたのが東京都が設立を準備していたGovTech東京でした。

答弁では、デジタル人材のシェアやシステム共同調達という面でGovTech東京への期待が示されました。同時に、市内での研修体制の充実についても確認しました。

外部連携こそが小平市DXの鍵

私が一貫して主張してきたのは、行政単独でDXを推進しようとする発想からの脱却です。

民間企業・NPO・大学・他自治体との連携によって、行政だけでは持てないノウハウと人材を活かす。この発想が、小平市のDX推進を加速させる鍵だと考えています。


あれから3年。小平市は動いた。

令和5年6月のあの質問から、もうすぐ3年。

現在、小平市では生成AIの全庁的な活用が実現しています。当時「予定なし」と答弁されていた使用ルールも策定され、日常業務での生成AIの活用が拡大しています。令和8年度にはケースワーク業務での生成AIによる支援も始まります。

質問(2023年)時の論点2023年6月・当時現在(2025年9月の答弁より)
生成AIの活用状況情報収集の段階(利用者:ほぼゼロ)全庁活用中。延べ利用人数 58人→2,694人(全職員の2割以上)
使用ルール策定予定なし「小平市生成AI利用ガイドライン」策定済み
人材育成具体的計画なしDX推進リーダー育成研修を実施(BPR研修を含む)

2023年6月の議会で種を蒔いたあの質問が、確実に市政を動かす力の一つになったと感じています。
しかし、これはゴールではありません。

  • 生成AIで、職員の仕事をもっとスマートに
  • AIが市民の「申請漏れ」を防ぐ仕組みへ
  • データとAIで判断する、科学的な市政へ
  • AIを使いこなせる職員を、小平市に育てる

やるべきことは山積みです。深谷幸信はその後もこのテーマを追い続け、 令和7年9月定例会でも改めて質問に立っています。

テクノロジーはあくまでも「人に寄り添う行政」を実現するためのツール。この信念を胸に、これからも小平市のDX推進を議会からリードしていきます。


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