「この事業、本当に効果があるの?」——そんな疑問に、データで答えられる市役所へ。
令和8年3月定例会の一般質問では、限られた資源で最大の成果を生み出す行政運営に向け、データに基づいて政策を決める行政への転換をテーマに提言を行いました。
- PPDACの導入:課題から始まる政策づくりへ
「何が問題なのか」という課題から出発し、データ収集・分析を通じて結論を導くPPDACサイクルを政策形成に取り入れ、事業の効果を客観的に検証できる仕組みをつくること。 - 入口と出口の設計:事業は始める前に成功基準を決める
新しい事業を始める際に、成功の定義、評価の時期、未達成の場合の対応(改善・縮小・終了)をあらかじめ決めておくことで、成果で判断する行政運営を実現すること。 - GISの高度活用:地域のリスクを「見える化」する
防災、通学路安全、インフラ管理などのデータを地図上で重ね合わせ、地域の課題を可視化することで、データに基づく政策判断を可能にする基盤を整えること。 - データ人材の育成:政策を支える分析力を行政に
データを読み取り政策判断につなげる「高度データ利活用人材」を育成するため、内部育成・外部連携・AI活用を組み合わせた人材育成を進めること。
はじめに:なぜ今、「データで政策を決める」必要があるのか
「この事業、本当に効果があるの?」皆さんがそう感じたことはありませんか?
小平市では、人口構造の変化などにより、行政に求められる役割が年々大きくなっています。一方で、使える予算や職員数には限りがあります。
こうした状況の中でも、市民サービスの質を守り、さらに高めていくためには、「なんとなく良さそう」という判断ではなく、データに基づいて政策を判断する仕組みが重要になります。
そこで今回の一般質問では、データを活用した政策づくりの進め方について提案しました。
私の提案①:データで課題を解決する「PPDAC」という考え方
問題点:今の評価制度では「やったこと」しか測れない
現在、多くの行政事業は、PDCA(計画→実行→評価→改善)という考え方で進められています。計画を立て、実行し、その結果を振り返って改善していく仕組みです。
しかし、この方法には課題もあります。
それは、「計画どおりに事業が進んだか」は確認できても、その結果、市民の暮らしが本当に良くなったのかまでは十分に測れないことがある点です。
解決策:PPDACサイクルの導入
そこで今回、私が提案したのが、データをもとに課題を明らかにし、分析して結論を導く「PPDAC」という考え方でこれは統計やデータ分析の分野で使われているフレームワークで、
- 何が問題なのかを整理する
- 必要なデータを集める
- 分析する
- その結果から結論を出す
という、データに基づいて判断するための手順を整理したものです。
PPDACは次の5つのステップで進みます。
- Problem(課題)
何の問題を解決したいのかを明確にします。 - Plan(計画)
課題の原因を考え、どんなデータを集めて検証するのか計画を立てます。 - Data(データ収集)
仮説を検証するためのデータを集めます。 - Analysis(分析)
データを分析し、何が原因なのかを読み解きます。 - Conclusion(結論)
分析結果をもとに、事業を続けるのか、改善するのか、見直すのかを判断します。
データに基づいて判断し、次の政策につなげます。ポイントは「課題」から始めること。データを後付けの説明に使うのではなく、政策を作る出発点にする——これが本質です。
小平市の行政ではどう活かせるのか
このPPDACの考え方は、行政のさまざまな場面で活用できます。
例えば、市役所では毎年多くの事業が行われていますが、「続けるべき事業」と「見直すべき事業」を判断することが重要です。
PPDACを活用すれば、
- どの事業が市民にとって効果が高いのか
- どの事業は改善が必要なのか
- どの事業は役割を終えているのか
といったことを、データをもとに判断することができます。
また、新しい事業を始めるときにも役立ちます。
例えば、
- 本当に必要な事業なのか
- どのような方法が最も効果的なのか
- どのくらいの成果が見込めるのか
といった点を、事前にデータを使って検討することができます。
こうしたプロセスを積み重ねることで、限られた予算や人員の中でも、より効果の高い市民サービスを実現することが可能になります。
私の提案②:事業は「始める前に終わり方を決める」
もう一つ提案したのが、事業の「入口」と「出口」を最初に決めておく仕組みです。
行政では、新しい事業を始めることは比較的簡単ですが、長年続いた事業を終わらせることはとても難しいと言われています。
そこで、新しい事業を始めるときには、次の3つをあらかじめ決めておくことを提案しました。
- 何を達成すれば成功なのか(具体的な目標)
- いつ評価するのか(2年後、3年後など)
- 目標を達成できなかった場合どうするのか(改善・縮小・廃止)
つまり、「とりあえずやってみる」ではなく、成功の基準を最初に決めてから事業を始めるという考え方です。
成果で判断する「サンセット条項」
そして、評価の時点で成果が出ていない場合には、
- 改善する
- 規模を見直す
- 必要がなければ終了する
という判断を行います。
これは「何年経ったから見直す」という方法ではなく、成果が出ているかどうかで判断する仕組みです。
議会ではこれまでも、補助金などに年限を設ける仕組みが議論されてきました。
今回提案したのは、年数ではなく成果で判断するサンセット条項です。
本当に必要な事業に予算を使うために
PPDACによってデータで成果を確認し、成果が出ていない事業は見直す。
こうした仕組みを取り入れることで、限られた予算や人員の中でも、本当に効果のある事業に資源を集中する行政運営につながると考えています。
今後も、持続可能な市政運営に向けて、データに基づいた政策づくりを進めるよう提案していきます。
私の提案③:GISで「地域のリスク」を見える化する
今回の一般質問、次に提言を行ったのが、GIS(地理情報システム)の高度活用です。
現在、小平市でも統合型・公開型GISの運用が始まりますが、これを単なる地図の閲覧ツールで終わらせないことが重要です。
例えば、防災分野では避難行動要支援者の情報を地図上に整理することで、
- 誰がどこにいるのか
- どの避難ルートが適切か
- 災害時の安否確認をどう行うか
といった判断を迅速に行うことが可能になります。
また、通学路の安全対策でも活用が期待されています。
先進自治体では、児童が入力した「ヒヤリハット体験」をデータとして集め、危険箇所を地図上に可視化する取り組みが進んでいます。
こうした仕組みが整えば、
- 危険箇所の把握
- パトロール強化の判断
- 交通安全対策の優先順位付け
など、データに基づく安全対策が可能になります。
さらに、道路損傷の通報やインフラ修繕の履歴など、さまざまな行政データをGIS上で重ね合わせることで、
- 修繕の優先順位
- インフラの予防保全
- 効率的な維持管理
といった行政経営の判断基盤として活用することもできます。
GISは、単なる地図ではなく、地域のリスクと課題を可視化する政策ツールです。データを「扱う」だけでなく、分析を通じて市民サービスの質を高める「市役所の新たなOS」としての活用が期待されます。
GISは、地域の課題やリスクを可視化し、政策判断を支える重要な基盤です。小平市においても、この可能性を実際の政策に生かしていけるよう、今後も提言を続けていきます。
私の提案④:職員の「データ分析力」を高める
システムを導入するだけでは成果は生まれません。
ツールではなく、人が変わらなければ意味がないからです。
どれだけ優れた仕組みを導入しても、それを使いこなせる人材がいなければ行政改革にはつながりません。
市が育成すべきなのは、単にソフトを操作できる職員ではなく、
- このデータから何が分かるのか
- この課題を解決するには何を分析すべきか
といった問いを立てられる高度データ利活用人材です。
そこで提案したのが、次の三つを組み合わせた人材育成です。
- 内部育成
職員のデータリテラシーを高め、データを読み解く力を組織全体で底上げする。 - 外部連携
GovTech東京や大学・企業などと連携し、専門的な知見を行政に取り入れる。 - AI活用
生成AIを「思考のパートナー」として活用し、政策分析やアイデア創出に生かす。
昨年9月の議会では、生成AIは政策立案に有用であるとの認識も示されています。

今こそ、それを実践できる研修体系を整備していくことが重要です。
データを集めるだけの行政から、データで意思決定する行政へ。
その鍵を握るのは、システムではなく人材です。
行政のデータ活用を支えるのは人材です。職員のデータ分析力を高める仕組みづくりについても、引き続き取り組んでいきます。
市の反応:「検討」と「制度設計」で前向きな姿勢
今回の質疑では、データ利活用の考え方そのものについて、市側から一定の理解が示されました。
特に、
- データ利活用と事業評価を結びつけることの重要性
- 課題設定から分析までを重視するPPDACの考え方
については、市の取り組みとも親和性があるとの認識が示されています。
また、GISの活用やデータ人材の育成についても、行政サービスの向上にとって重要であるとの認識が共有されました。
一方で答弁の多くは、「制度設計の中で整理する」「研究していく」という段階にとどまっています。
これは決して後ろ向きな姿勢ではありません。
むしろ、市としてデータ利活用を進めていく方向性自体は共有されていると言えます。
だからこそ重要なのは、この議論を「検討」で終わらせないことです。
私が目指すもの
「なんとなく良さそう」から「データが証明する成果」へ
限られた予算の中で市民サービスを向上させていくためには、客観的な根拠に基づく政策判断が欠かせません。
そのためには、シンプルですが重要な原則があります。
- 効果がある事業は続ける
- 効果が限定的な事業は改善する
- 効果がない事業は見直す
こうした判断を、感覚ではなくデータに基づいて行う行政へと転換していくことです。
データを集めるだけの行政から、
データで成果を生み出す行政へ。
そのための仕組みとして、PPDAC、事業評価、データ基盤、そして人材育成を提案しました。
これらを市政運営の「新しいOS」として実装していくことこそが、市民の皆さんの信頼に応える道だと考えています。
今後も、データに基づき成果を生み出す小平市政の実現に向けて、具体的な提案を続けてまいります。
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