「農のあるまち小平」を未来へ。地産地消と農業支援のさらなる推進を。

【このレポートの要約】

「農のあるまち小平」を未来へつなぐためには、気候変動や物価高騰に直面する生産現場への、より具体的で実効性のある支援が急務です。小平市議会令和7年12月定例会の一般質問では、都市農業の持続可能性を高めるための3つの提言を行いました。

  • 学校給食における地産地消の堅持:気候変動下でも地場産野菜利用率30%の目標を維持すること。生産者の経済的負担を軽減し、安定供給を図るため、利用促進事業の継続および補助額の引き上げを行うこと。
  • 収穫後の品質保持に向けて:猛暑による農産物の廃棄を防ぐため、鮮度維持に不可欠な「保冷庫」の導入や、維持管理(メンテナンス)費用に対する市の支援制度を拡充すること。
  • 農商・農学連携による新たな価値創出:地元の飲食店や学生と連携した新商品開発やブランディングを後押しすること。産業まつり等をプロモーションの場として活用し、小平農業のファンを増やす仕組みを作ること。

目次

はじめに:「農のあるまち小平」を未来へつなぐために

小平市の魅力の源泉であり、私たちの暮らしに彩りを与えてくれる「農」。都市と農地が共存する風景は、小平の個性そのものです。このかけがえのない地場産業である農業を未来へと継承していくことは、市政の重要課題の一つです。しかし、近年の記録的な酷暑や物価高騰は、生産現場に深刻な影響を及ぼしており、その持続可能性が問われています。

こうした状況を踏まえ、私は先日行われた令和7年12月定例会にて一般質問に立ち、「農のあるまち小平」を守り、さらに発展させていくための具体的な政策推進を市に強く求めました。

\背景とポイント/
  • 小平の個性、地場産業としての農業: 都市と農地が共存する町の個性を象徴する、多面的な価値を持つ重要な地場産業です。
  • 直面する課題: しかし、酷暑や物価高騰など、農業を取り巻く環境は依然として厳しく、多くの課題が山積しています。
  • 今回の質問の主旨: これらの課題を乗り越え、生産と消費のつながりを強化し、安定した農業経営を支えるための具体的な施策について、市の見解を質しました。

まず子どもたちの食を支える学校給食の現状からです。

学校給食:地産地消の要、目標達成への正念場

小平市は、地元の農産物を使った「地場産学校給食」の取り組みを積極的に推進しており、農家、JA東京むさし小平地区、学校栄養士が協力し、地産地消を進めています。学校給食で小平産の農産物を利用することは、単に新鮮で安全な食事を子どもたちに提供するだけに留まりません。自分たちの住むまちで採れた野菜を味わうことを通じた「食育」、地域経済を支える「生産者支援」、そして小平の食文化を次世代に伝える「文化継承」という、複数の重要な役割を担う取り組みです。

利用率の現状と課題

小平市では、学校給食における地場産物の利用率30%を目標として掲げています。過去にはこの取組が農林水産大臣賞を受賞するなど、本市の特色ある取組です。

しかしながら、令和6年度では、小学校での利用が30%を割り込み、今回の質問で確認したとろこ、令和7年9月末時点の利用率は、小学校:29.6% / 中学校:11.0%、気候変動(猛暑、雨不足)が常態化する中で、小学校における利用率30%の目標達成は今年度も困難であるとの認識が示されました。

気候変動が一時的な要因ではなく、今後の計画策定における恒常的な前提条件であることを示唆しています。そこで、気候変動に対応するためのサポート、新しいアプローチ、利用率向上に向けたさらなる取組を求めました。

収穫後の支援強化:フードロス削減と安定供給の鍵

「農業」というと「作ること」に目が行きがちですが、「収穫してから消費者に届けるまで」の品質管理が死活問題となっています。特に近年の酷暑は、収穫後の農産物の品質を急速に劣化させ、食品廃棄の原因ともなっています。この「収穫後」の課題に光を当て、支援を強化することが、フードロス削減と安定供給の両面から急務となっています。

玉ねぎ1.5トンの廃棄に見る課題

この問題の深刻さを象徴する出来事が、昨年度起きていました。高温被害により約1.5トンの玉ねぎが保管中に傷んでしまい、学校給食への供給に大きな支障をきたしたのです。これは約40数万円の損失に相当し、生産者にとって大きな打撃であると同時に、収穫後の品質保持対策がいかに重要であるかを突きつけました。

保冷庫の導入・維持支援を

令和7年度からの環境保全型農業推進事業の拡充によって、高温障害等の被害を軽減する資材や、施設を整備する取組について市として補助支援を始めました。しかしながら、その補助対象の拡大や、新たな補助についての声をいただいたことから、収穫後の品質保持と廃棄抑制に絶大な効果を発揮する「保冷庫」に注目し、市として導入や維持管理(メンテナンス)を支援すべきだと提案しました。

\私の提案/
  • 収穫後の品質保持に不可欠な保冷庫の導入・維持管理への支援を
    畑で収穫した農産物を一時的に保管する保冷庫は、鮮度維持はもちろん、計画的な出荷による作業効率化や、ネズミなどによる獣害防止にもつながります。市として導入や維持管理を支援することは、非常に有効な一手です。
    • 大型の設備導入については高額になるため、東京都の補助事業が存在するため、市としては、JA東京むさしと連携し、都の制度を農家の方へ周知していくとの答弁がありました。
    • 制度の狭間にいる(補助の適応外の生産者など)場合もあるため、あらためて補助制度の導入を求めました。
  • 環境保全型農業推進事業の適応範囲の拡大を
    • 市の「環境保全型農業推進事業」は、遮光ネットや散水器具などの「資材」購入が主な対象であり、保冷庫のメンテナンスや維持費は対象外です。
    • 環境保全型農業推進事業で補助できるメニューの拡大を含めて、柔軟な制度利用につながるように再度の制度設計を求めました。

価格転嫁と支援の強化

農業資材や人件費の高騰など、生産コストは上昇し続けています、その負担分を農産物の価格にどう適切に転嫁していくかは大きな課題です。「経済的なインセンティブ」に関する声も届いており、学校給食以外の販路が魅力的に映る状況が生まれることもあります。質の高い農産物をいかに持続可能な形で学校給食に供給していくかについての議論です。

\私の提案/
  • 「小学校給食地場農産物利用促進事業」の継続・補助額の引き上げを
    「小学校給食地場農産物利用促進事業」は、元々は、地場産農産物の利用のきっかけとなるようにとつくられた事業ですが、地場産農産物の安定確保と特色ある給食の実現、生産者支援を同時に担う、都内でも稀有な重要な制度となっています。
    • 今後も、小学校給食地場農産物利用促進事業の継続、補助額引き上げを求め、小学校給食地場農産物利用促進事業を継続する旨の答弁がありました。今後も、適切な補助について求めて参ります。

国の給食費無償化後も、特色ある給食の維持を!

現在、国では2026年度からの小学校の給食費無償化に向けて、自民、公明、日本維新の会3党の本格協議が始まりました。現時点の3党案は、全国の給食費平均月額4688円を軸に児童生徒数に合わせて自治体に一律助成し、不足分は保護者負担を求めるか、自治体が充当する「国による一部無料化」を想定しているとのことです(2025年12月1日時点での情報)。

場合によっては、市の財政負担が増加する可能性がある中でも、市としては地場産農産物利用率30%の目標を堅持するのかとの問いに対して、小平市の農業振興計画に掲げた目標であり、「市として達成できるよう取り組んでいく必要がある」と、今後も利用率30%の目標を堅持する方針であることが確認されました。これは、本取り組みが市の農業振興における重要施策として位置づけられていることを再認識させるものです。


新たな価値の創出へ:「農商連携」と「農学連携」の推進

先日、練馬区で開催された「全国都市農業フェスティバル2025」に視察も兼ねて伺いました。全国から32自治体が参加し、それぞれの地域で育まれた都市農業の魅力が一堂に集結。各地の新鮮な農産物や特産品・加工品が並び、都市における農業の可能性を強く感じることができました。全国の名だたる自治体が並ぶ中、小平市は今回が初めての出店でした。

小平ブースでは、キウイフルーツ、さつまいも、里芋、焼き芋、ブルーベリージャムなど、小平ならではの農産物を紹介し、多くの方に足を止めていただいていました。

他自治体の取組も視察し、

  • 農産物の新たな販路づくり
  • 住民との交流を深めるイベント企画
  • 地域資源を活かしたシティプロモーション など、

小平市の農業振興や産業施策に活かせる多くのヒントを得ることができました。

未来につながる新たな挑戦を

小平の農業の魅力をさらに高め、未来へつなげていくためには、既存の農産物を生産・販売するだけでなく、新たな発想で価値を創造し、小平の農業のファンを増やしていく取り組みが不可欠です。そのための具体的な手法として、私は「農商連携」と「農学連携」の可能性を市に問いました。

\私の提案/
  1. 農商連携の深化
    市内の飲食店など、食のプロからの「こんな野菜を作ってほしい」というニーズに応え、生産者の方々が新たな品種の栽培に挑戦する動きが始まっています。こうした生産者と事業者が連携した新たな挑戦を後押しする支援策を講じることで、小平ならではの新たな食の魅力を生み出すことができると提案しました。
  1. 農学連携の進化
    市内の高校生や大学生の若い感性と柔軟な発想を活かさない手はありません。商業ベースに乗せることを前提とした仕組みづくりを提案しました。
    • 学生と生産者が協働し、商品開発やプロモーション戦略を考えるこの取り組みは、新たな名産品を生み出すだけでなく、未来の小平ファンを育てるシティプロモーションにも繋がるものと考えています。

小平市産業祭りのさらなる支援を

小平市産業祭りは、多くの来場者が市内の農業や商工業の特色に触れることができる、市の魅力を広く発信できる重要なイベントであると位置づけられています。本年は約3万人の来場があり、そのPR効果は大変高いと認識されています。

\私の提案/

小平市産業祭りが地域ブランドの魅力を最大限に発揮できる不可欠な場であると捉え、以下の提案を行いました。

  • 農商連携や農学連携も含めた農のあるまち小平のプロモーション強化を提案していくこと。
  • 例えば、農学連携による新たな取組(たとえば(仮称)「未来につなぐ、新たなこだいらブランドコンテスト」など)の開催や、新たな農商連携・農学連携のお広めの場として活用すること。

これに対し市は、産業祭りの高いPR効果を認識しており、提案されたような新しい取り組みをイベントでお披露目する際は、実行委員会とよく相談をして取り組んでいく考えを示しました。

近年の物価高騰により、設営費などの運営経費が増加し、実行委員会には大きな負担が生じています。産業まつりを今後も持続的に開催し、地域産業の振興につなげていくためには、こうした実情を踏まえた支援の充実が求められます。

市は毎年、産業まつり実行委員会へ運営費の一部を補助しており、令和7年度は前年度比で60万円増額しています。しかし、物価高騰による負担増の報告も受けていることから、市は今後の支援内容について検討していくとの考えを示し、引き続き実行委員会の声を丁寧に聞いていく姿勢を示しました。

私としても、産業まつりを持続的に開催していくためには、適切な補助のあり方や、市の関わり方をさらに見直していく必要があると考えています。今後とも、実行委員会が安心して運営できる体制づくりに向け、提言を行ってまいります。


結びに:まいた種を、確かな実りへ

今回の一般質問では、皆様からお預かりした声をもとに、「農のあるまち小平」を未来へつなぐための大切な種をまかせていただきました。

学校給食における地産地消の目標堅持と生産者支援の強化、気候変動を見据えた収穫後の品質保持対策、そして農商・農学連携による新たな価値創造。これらの提案が一つでも多く実を結び、小平の農業がさらに輝きを増すよう、今後も現場の皆様の声に真摯に耳を傾け、粘り強く市への働きかけを続けてまいります。

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