令和7年(2025年)6月定例会 一般質問「2040年を見据えたDX推進とデジタル行政の再設計に向けて」レポート
令和7年6月定例会では、いわゆる「2040年問題」を見据え、行政の在り方そのものを再設計する変革としてのDXを提言しました。
- DX推進体制の強化:東京都から迎えた新CIOのもとで体制が刷新された一方、外部の知見を実行につなげるスピード感が課題であることを指摘した
- DXビジョンの策定と市民参画:若手職員10人によるボトムアップでのビジョン策定が進む中、市民・事業者の声を反映する仕組みがないことを問いただし、共感を生むビジョンへの改善を求めた
- AIを活用した市民意見の収集:品川区や東京都の先進事例を紹介しながら、スモールスタートでのAI活用によるブロードリスニングの実施を提言した
- DXの成果の見える化:ダッシュボードやKPIによる投資対効果の公開を求め、市民と庁内の双方がDXの意義を実感できる仕組みづくりを訴えた
- アナログ規制の見直しとUX視点のサービス設計:申請からプロセス完結までフルデジタル化を実現するためのアナログ規制点検と、住民を巻き込んだプロトタイピングの必要性を提言した
はじめに:2040年問題を、今解かなければならない理由
税収の減少、職員の大量退職、住民ニーズの多様化・複雑化——2040年に向けて、自治体を取り巻く環境は急速に厳しさを増していきます。これまでの延長線上にある行政運営では、もはや立ち行かなくなる日が来ます。
DXは、単なる業務効率化の手段ではありません。変化し続ける社会の中で、自治体が持続可能であり続けるための「行政の再設計」そのものだと考えています。システム導入や業務改善にとどまらず、組織文化や意思決定プロセスそのものを見直すこと。それが真の意味でのDXです。
令和7年6月定例会では、2040年を見据えて今なすべき「変革」としてのDXの視点を市に問いました。
質問①:新しいCIOで、DXは加速するか
2025年4月、副市長が2人体制となり、東京都から迎えた副市長が新たなCIOに就任しました。
答弁では、東京都とのDX施策に関する情報共有・連携の強化が期待されること、DX推進担当に1人を増員したことが示されました。また東京都との連携として、障がい者支援・ウェブサイト改善・公共施設予約・高齢者向けスマートフォン支援など、複数の分野で協力関係が進んでいることも確認できました。
しかし再質問で確認したのは、外部の知見がスピード感をもって実行に移せる体制になっているかという点です。
「外部からの提言が、単なる知見の集積にとどまらず、即実行できる体制になっているか」——この問いに対し、答弁では「デジタル環境の整備に着手していく必要がある。ハード系とソフト面の両輪が整えばDXのスピード感はさらに加速する」との見通しが示されました。
「DXの飛躍の年」と位置づけられた令和7年度。その言葉の重みに見合ったスピード感で動くことを、強く求めました。
質問②:DXビジョンに、市民の声は入るか
令和7年度中の策定が進められているDXビジョンは、2040年の市役所の理想像を描き、そこからバックキャスティングで2035年・2030年の到達点を設計するものです。
若手職員10人のDX推進リーダー(20代中盤〜40代前半、8部門から選定)が中心となり、月1〜2回のペースでデジタル政策参与も加わりながら策定が進んでいます。
しかし答弁で明らかになったのは、市民・事業者の意見を反映する仕組みがないという事実でした。「内発的な動機づけとして、まず市役所自身の変容を考えるもの」という位置づけだからというのが理由です。
これは問題だと考えます。2040年の行政サービスの在り方は市民生活に直結するものです。デジタル政策参与が三重県CDO時代に「みえDXアイデアボックス」で県内外の意見を集約してビジョンに反映させた実績も紹介しながら、市民参画の仕組みを設けるよう求めました。
答弁では「経営方針推進委員会での報告の中で委員からの意見を得る機会を確保したい」との姿勢は示されましたが、本格的な市民参画には至っていません。共感を生むビジョンは、市民と一緒につくるものだという思いは変わりません。
質問③:市民の声を、AIで拾う
品川区では区民アンケートの自由記述欄(約650万字)を生成AIで分析し、数週間かかる作業を約90分で完了させました。東京都も「2050東京戦略」策定にあたってAIを活用したブロードリスニングを実施し、SNSの書き込みや街角ヒアリング、郵送意見を幅広く収集・分析しました。
一方で、国のパブリックコメントでは生成AIで作成された意見の大量投稿が問題化しています。市民の声を集めるデジタル化には、こうしたリスクへの対応も必要です。
答弁では「AIによる意見の誤認識や結果の誘導という課題がある」として慎重な姿勢が示されましたが、だからこそスモールスタートで試行し、ノウハウを蓄積することが大切です。東京都のCIOとの連携の中でこうした知見の共有も進めていただくよう求めました。
質問④:DXの成果を、数字で見せる
「このDX投資は、本当に効果があったのか」——市民も議会もそれを知る権利があります。
他自治体では、業務処理時間の短縮率・手続のオンライン化率・削減した紙書類の枚数などをKPIとして数値化し、ダッシュボードで公開する取り組みが進んでいます(東京都・神戸市など)。
答弁では「DXビジョンと合わせて基本的な考え方・戦略を示す予定で、KPIの設定は検討事項」との見解が示されました。また令和7年度中にDX推進ロードマップを更新するとのことです。
DXは初期投資がかかります。それを市民の納得のもとで進めるためにも、投資対効果の可視化は必須です。ダッシュボードによる公開を早急に整えることを求めました。
質問⑤:書かない・行かない市役所へ。アナログ規制を見直し、フルデジタルへ
今回の質問では「判こレス・書類レス・窓口レス・現金レスの四つのレス」、つまり「書かない市役所・行かない市役所」の実現を問いました。
答弁では、現状としてLoGoフォーム等の申請ツールによる各種申込みへの対応、LINEを活用したサービス提供、証明書等のコンビニ交付など、窓口に行かなくても済む取り組みが順次進んでいることが示されました。フロントヤード改革も継続中です。
しかし課題はその先にあります。オンライン申請が増えても、庁内のどこかで「印刷して目視確認」というアナログなプロセスが残っていれば、職員の負担は実質的に減りません。町田市の「まちドア」が取り組んでいるのはまさにこの問題で、申請から処理まで一貫したデジタルプロセスを実現しています。
アナログ規制点検についての答弁では「デジタル庁のマニュアルを読み込んで検討している段階」とのことでした。全庁一斉よりも、課題の明確な分野から重点的に取り組む方向性は共有できました。
あわせて、住民を巻き込んだプロトタイピング・ユーザーテストの必要性も訴えました。「デジタル化すれば便利になる」という思い込みは禁物で、「紙の方が全然楽」という声が出るようなシステムでは本末転倒です。デジタル政策参与も「デジタル化するだけではDXではない」と述べています。使う市民が開発段階から関わり、フィードバックを重ねて改善し続けることがUX視点のサービス設計の本質だと提言しました。
この質問のその後
| 論点(2025年6月の質問) | 当時 | その後 |
|---|---|---|
| DXビジョンの策定 | 若手職員10人で策定中 | 令和8年3月に完成 |
| アナログ規制の見直し・BPR | マニュアルを読み込んで検討中 | 令和8年度よりアナログ規制見直し・BPR推進をスタート |
| 行かない市役所・オンライン手続き | LoGoフォーム等で対応中 | 令和8年度よりLoGoフォームに本人認証・決裁機能を追加。教育施設のオンライン予約もスタート |
| DXの成果の見える化 | KPIの設定は検討事項 | 引き続き追跡中 |
| 市民意見のAI活用 | 研究・情報収集段階 | 引き続き追跡中 |
DXは、「誰も取り残さない行政」へシフトするための手段です。たとえば窓口での待ち時間が短くなったり、スマホで手続きができるようになったり——そうした小さな変化の積み重ねが、大きな改革につながります。
行政だけでなく、市民や地域の声を取り入れながらDXを進めることが大切です。DXビジョンが完成し、アナログ規制見直しやBPRが動き出した今、次は「実行し、成果を出し、市民に届ける」フェーズです。職員・市民双方にとって実感のあるDX推進が進むよう、これからも議会から提言し続けます。
