データがバラバラでは、政策は動かない。小平市のデータ戦略を問う。

令和5年(2023年)12月定例会 一般質問「小平市のデータ戦略について問う」レポート

このレポートの要約

令和5年12月定例会では、小平市のデータ戦略の現状と課題を正面から問いました。

  • オープンデータ公開の実態:2023年当時、小平市が公開していたオープンデータの状況と、自治体標準オープンデータセット27分野中19しか提出できなかった背景を明らかにした
  • データ戦略の核心を問う:データを「集める」だけでなく、「使える形にする」ことの重要性を議会で訴えた
  • BIツール活用とEBPMへの提言:データの可視化・分析ツールを活用し、感覚ではなくデータに基づいて政策を判断する行政への転換を求めた
  • LINE通報システムの可能性と限界:市民が手軽に情報を届けられる仕組みとしての可能性を評価しつつ、データ活用につなげるための課題を指摘した
  • 「データが整わなければ、DXは絵に描いた餅になる」:どれだけデジタルツールを導入しても、その土台となるデータが整備されていなければ意味がないという問題意識を提起した

目次

「シェフはいるのに、材料がない」という問題

2023年秋。私は議会の決算審査に臨む中で、一つの問題意識を強く持ちました。

「施策の効果が、データで説明できない。数字があっても、それが何を意味するのかが見えない」

行政にはさまざまなデータが集積しています。人口動態、福祉、教育、財政、環境——膨大な情報が日々蓄積されています。しかし、それらが整理され、分析され、政策に活かされなければ、市民にとっても政策立案者にとっても、ただの「ファイルの山」に過ぎません。

私は前職で、科学者・研究者としてデータ解析に日常的に向き合ってきました。もちろん、科学の世界と行政とでは、扱うデータも分析手法も異なります。

しかし、本質は共通しています。データをもとに現状を正しく捉え、そこから意味を読み取り、次の判断や行動につなげていくこと。

このプロセスこそが、研究でも政策でも成果を左右する核心だと考えています。データを使いこなせる行政は、より少ない予算で、より大きな成果を生み出すことができます。しかし当時の小平市は、まだその入口にも立っていないのではないか——。

この問題意識が、令和5年12月定例会での一般質問へとつながりました。


質問①②:オープンデータの現状と課題

196件の公開データ、しかし「使われているかどうかわからない」

答弁によれば、2023年3月、小平市は12の分野・合計196件のデータをオープンデータとして公開しました。一歩前進です。

しかし私が確認したかったのは「公開した後」の話です。

ダウンロード数は把握されていませんでした。

つまり、誰がどのデータを使っているのか、ニーズがどこにあるのか——全くわからない状態でした。アクセス数は把握されており、人口データや治安・防災関連が多いことはわかっていましたが、それ以上の分析はありませんでした。

「費用対効果を考慮する」と指針に書いてあるが、測る仕組みがない

小平市には「オープンデータ推進に関する指針」が存在します。その中には「費用対効果や市民ニーズ等を考慮する」と書かれています。

しかし私が問いただすと、費用対効果をどう測るかの基準も、市民ニーズをどう把握するかの仕組みも、明確に定まっていないことが明らかになりました。

指針があっても、それを運用する仕組みが整っていない——これが当時の小平市の現実でした。


質問③:データフォーマットの統一という根本問題

27分野のうち、提出できたのは19。その理由

2023年、デジタル庁が示した「自治体標準オープンデータセット」に基づき、東京都が都内市区町村からデータを収集する取り組みが行われました。小平市が提出できたのは、27のデータセットのうち19にとどまりました。

理由は2つです。一つは、そもそも市としてデータを保有していない分野があったこと。もう一つは、東京都からの説明が5月末、提出締切が7月末というタイトなスケジュールの中で、既存データをそのまま転記できるものに限定せざるを得なかったこと。

答弁でも明らかになりましたが、各課が保有するデータの形式はバラバラです。エクセル、アナログの紙、各課独自のシステム——同じ小平市のデータなのに、形式が統一されていない。これでは横断的な分析もできないし、オープンデータ化も毎回一から変換作業が発生します。

「フォーマットの統一」という当たり前の要求

私はこの現状を問題視し、こう提言しました。

「これからデータを取る際は、統一されたフォーマットで保有するよう、一つの通達を出すだけで済む話ではないか。早急に進めるべきだ」

答弁では「必要だと認識している。今後検討していく」という方向性が示されました。

データを使いこなすための前提条件——それが「フォーマットの統一」です。ここを疎かにしたまま、どんな高度なDXツールを導入しても意味がありません。


質問④:LINE通報システムの可能性と限界

2023年11月、LINEによる市民通報システムが始動

2023年11月、小平市では市公式LINEを使った道路・公園等の不具合通報システムが稼働し始めました。24時間365日、写真付きで不具合を報告できるこの仕組みは、一歩前進です。

しかし私が問いただしたのは「その先」でした。

「集めたデータを公開・共有する」という発想の欠如

私が視察した神戸市では、通報された情報が地図上でオープンに公開されており、「受付済み→対応中→対応済み」という行政の対応状況が市民から見えるようになっていました。

「同じ箇所に何度も同じ通報が来れば、担当課の負担が増えるだけだ。情報を共有すれば、市民も行政も効率的になる」

小平市のLINEシステムは、当時この機能を持っていませんでした。神戸市が独自開発したシステムを参考にしながら、情報の可視化・オープン化を求めました。

また、LINEのデータ流出問題が取り沙汰されていた当時の状況も踏まえ、MyCityReportなど複数の選択肢を持つことの重要性についても提言しました。


質問⑤:BIツールでデータを「見える化」する

「エビデンスのない評価に納得できない時代」

この質問の最も重要なテーマが、BIツール(ビジネスインテリジェンスツール)の活用です。

BIツールとは、散在するデータを集約・分析し、グラフや地図でわかりやすく可視化するツールです。東京都や神戸市、新潟県柏崎市では、デジタル予算書や行政事業の進捗をBIツールで市民に公開する取り組みが進んでいました。

私はこう訴えました。

「税金を使う以上、『やりました・A評価でした』だけでは納得できない時代だ。どんな政策に効果があったか、どんなデータがあるからやめるのか——エビデンスに基づく意思決定(EBPM)こそが、これからの行政に求められる姿だ」

答弁では「事例は把握している。今後研究していく」という段階にとどまりましたが、データ分析の専門家を招いた職員研修が実施されていることも確認できました。

「ツールを入れれば解決する話ではない。まず人がデータを読む力を持ち、整理されたデータがあってこそ、BIツールが活きる」——この視点を行政に植えつけることが、この質問の本質でした。


この質問のその後

あれから2年あまり。データ活用を巡る市政の動きは、少しずつ前進しています。

令和7年度予算では、都市計画・建築・道路・防災マップなど複数分野の情報を統合型GISで一元管理するシステムの構築が盛り込まれました。2023年12月の質問で問い続けてきた「データを横断的に使える基盤」が、ようやく形になり始めています。

一方で、課題は残っています。データを集める仕組みは整いつつあっても、そのデータで何を判断するかという問いには、まだ十分な答えが出ていません。

そこで私は令和8年3月定例会でも、このテーマを改めて議会に持ち込みました。

テーマは 「データで成果を出す小平市政へ」 。

  • 課題から出発してデータで検証する「PPDAC」サイクルの政策形成への導入
  • 事業を始める前に成功基準・評価時期・終了条件を決める仕組み(サンセット条項)
  • 防災・通学路・インフラ管理にGISを本格活用すること
  • データを読み解き政策につなげる「高度データ利活用人材」の育成

2023年12月に蒔いた種は、まだ育ち途中です。「施策の効果が、データで説明できない。数字があっても、それが何を意味するのかが見えない」という課題感から始まったこの問いを、私はこれからも追い続けます。

関連する深谷幸信の重点政策 → 行政を、賢く進化させる。


令和5年12月定例会 一般質問「小平市のデータ戦略について問う」 小平市議会議員 深谷幸信

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